Sweet Smell 02-03月号

基準嗅力検査にニオイ語表は不要

基準嗅力検査は、平均認知域値が「嗅力」に相当するほど、最も重要な嗅覚検査です。ただこの検査は嗅いだにおいを自分の言葉で答えるという検査方法が難しいため、以前から「基準嗅力検査で用いるニオイ語表」(写真)が多くの施設で実施されています。

この語表はにおい試薬各々に4つの選択肢が設けられ、その中から一つ選んで回答とするのですが、問題は選択肢の内容です。Osit-QやOpen essenceの如く、4つの異なる名称ではなく形容詞(良いニオイ、いやなニオイ)と具体的名称とが混在しており、実質2択のようなもので、基準臭Bに至っては4つのうち3つが正解(焦げた、カラメル、甘い)ですので、本来の検査方法と比較するとスコアが格段と良くなってしまいます。同一の医療機関でもこの語表を被検者全員に使用するのか統一しないと画一性に乏しいデータになってしまいます。

私がこの語表を否定するもう一つの理由は、自分で答えることで被検者の嗅力を最大限に発揮できるということです。以前、基準臭B(メチルシクロペンテノロン)の答えを映画館と答えた方がいました。映画館といえば幼少の頃の薄汚く臭いイメージがあったので不正解にしたところ、シネコンのキャラメルポップコーンの甘い匂いの意だということで正解にしました。

語表を用いると一生懸命考えずに、当てずっぽうで安易に選択肢を選ぶ可能性もあります。また答えのバリエーションが少なくなり異嗅症、コロナ後遺症、認知症の正確な診断がしづらくなります。当院では18年間で延べ3000人を超えましたが1回も使用したことはありません。現状の検査方法での認知域値がリアルに「嗅力」と言えると思います。

保健研究協議会で鼻うがい

松原小学校主催の中央地区保健研究協議会が、かごしま国際交流センターで開催され、 昨年に続いて(主管校が異なるため)学校医講話を担当しました。

5分という短い時間で、においスティック検査の「香水」と「材木」を施行しましたが今回も正解率はよかったです。また鼻洗浄を今年も実践しました。準備と後始末がやや大変ですが、座学だけよりも、こういう実技(パフォーマンス?)を取り入れた方が参加者の印象に残るとは思います。

3回目の金沢

味と匂学会(2010年2-3月号参照)、第1回嗅覚冬のセミナー(2014年4-5月号参照)以来3回目の金沢に所用で訪れました。

「居酒屋こいで」の獅子海老、キジエビ、鬼海老、白がす海老、のどぐろが最高でした。「紅牡丹」の甘えびつけ麺(香り成分:ジメチルジスルフィド)もご当地的な美味でした。ただ悪天候のわりに観光客がかなり多いのには閉口しました。金沢駅、観光用周回バス、観光地周辺の歩道・・。タクシーに至ってはホテルから予約を断られるほどでした。が、一番驚いたのはセブンイレブンのレジが9つもあったことです(笑)。

この原稿の書き始めは12月末でしたが、まさか校了する時点であのような大地震が起きるとは誰が予測できたでしょうか。石川県の皆様にお見舞い申し上げます。