Sweet Smell 12-01月号

上咽頭擦過療法始める

当院でもコロナ後遺症に対して上咽頭擦過療法(EAT:epipharyngeal abrasive therapy 別称Bスポット療法)を本年4月より始めました。

コロナ禍の前までは自発性異嗅症(副鼻腔炎でもないのに自然に臭いにおいがしてくる)に対する治療法だというのは知っていましたが、今回のコロナ禍で全国的にも再燃した様子で日本耳鼻咽喉科学会では1つのセッションが組まれたほどです。使用薬剤は1%塩化亜鉛です。塩化亜鉛5g、10%塩酸適量、精製水全量500mlを調合するのですが依頼してから支給まで時間がかかりました。院内製剤クラス分類Tに相当するので承諾書にて同意を得ています。

治療方法は左右いずれかの鼻腔から内視鏡を挿入し、もう片方の鼻腔から1%塩化亜鉛を塗布した綿棒を挿入し、塗布というよりも出血するまで“擦過”します。痛がる方が多いのですが、意外と帰宅後に鼻出血をきたしたり、唾液に血液が混じった方はいません。咽頭扁桃に膿栓が付着していたり、擦過にて内部から膿汁が出てくる患者もいます。週2回5週間の計10回が一般的なプロトコルです。

令和4年11月末時点で当院で施行した全40名のうち、コロナ罹患による後遺症が25名(自発性異嗅症9名、頭痛5名、倦怠感6名、上咽頭痛3名、咽頭違和感2名)で、残りは上咽頭炎が10名、自発性異嗅症が5名です。改善度はVAS(本来は0〜100の線上で現在の苦痛度を指さしてもらう評価法ですが、今回は便宜上11段階評価として)と臨床所見から判断しているのですが、施行中の3名を除く37名のうち1回で治療終了が11名、同じく2〜4回が15名、5〜9回が3名、10回施行したのは8名と思いの他、早期に改善している結果でした。10回施行しての症状不変はわずか2名でした。

原因別で一番効果があったのは(コロナ後遺症でない)自発性異嗅症で5名中4名が施行3回以内にVAS10→0でした。また上咽頭への膿栓付着の有無は症状改善に差は無い印象を受けました。

治癒するメカニズムですが塩化亜鉛は上咽頭組織の収斂作用と殺菌作用を有し、また擦過することにより上咽頭の瀉血作用や迷走神経刺激作用に関与し、加えて隣接している頭蓋内組織への炎症の波及が減少することにより種々の効果が得られるとされています。また基礎研究では免疫組織学的スコア(IHC score)において新型コロナウイルスのスパイク蛋白と結合する受容体であるACE2と、その結合に関与する酵素であるTMPRESS2がともに減少するというコロナ治療に前向きな報告があります。しかし一方では自発性異嗅症の改善理由についてはいまだ不明のようです。

「やっぱり(治療すると効果が)違うな」と感嘆した方や、治療継続を懇願されて期間をおいた後に現在3クール目の方など、多岐にわたって好印象です。これからも続けてみます。

<参考文献>
『塩化亜鉛療法(B-スポット療法)とは何か?』
公益社団法人福岡県薬剤師会
『慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過療法の治療効果』
大野芳裕 口腔咽頭学会誌2019:32(1)
『Epipharyngeal Abrasive Therapy Down-regulates the Expression of SARS-CoV-2 Entry Factors ACE2 and TMPRSS2』
KENSUKE NISHI in vivo371-374(2022)

アントニオ猪木死去

家内とは結婚する前からタバスコを使うたびに「日本で最初にタバスコを輸入したのは誰?」とクイズの如くいつも質問するものだから、3回目の時には言い終わる前に「猪木でしょ!!」とレストランで怒鳴られたことがありました。「キレてるでしょ?」とはとても言えませんでした。しかし鹿児島で闘魂トークというイベントがあった際には猪木が「私と握手したい人」を言ったと瞬時に挙手して猪木に「はい、あなた」を指をさされ、ステージ上で、ビンタならぬ闘魂注入握手をされて羨ましいかぎりでした。

私が選ぶ最も好きな、名勝負はVSストロング小林戦(第2戦)、体育館は蔵前国技館、猪木フレーズは「風車の理論」、猪木グッズはアントンマテ茶(芳香成分:hexanol、pentanal)です。当時高校生だった私はほうじ茶の濁ったような、炊きすぎたような漢方薬のような匂いと感じていました。冬になるとマフラーは今でもジャケットの外に出して着ています(赤ではありませんが・・)。家内の病院の忘年会で3年前に100人の職員の前で壇上で「道」を前口上込みのフルバージョンで朗読してからの1.2.3ダーを閉会の挨拶としたのがいい思い出です。パラオ諸島にも行ってみたいです。