Sweet Smell 10-11月号

2005年4月から始まった本稿も今回で第88回です。あと2年後には100回に到達します。話題が尽きることは当分ないくらいストックはまだ十分にあります。

ということで今回のテーマです。ようやく終わりを告げようとしている夏の匂いの代表格と言えば私的には蚊取り線香です。お彼岸の仏壇の線香や、スモーキィな線香花火も好きですが、漢方+煙+青臭さの匂いは小学校の頃、毎年夏休みに祖父母の家に行っていた片浦(現:南さつま市)を思い出させます。

線香は白檀、丁子、竜脳につなぎとして粘着力のあるタブノキの樹皮の粉末を用います。それに対して、蚊取り線香は蚊を駆除する目的で線香に、除虫菊の胚珠部分に含まれているピレトリン(ピレスロイド系成分)を練りこんだ“殺虫剤”で主な生産地は和歌山県有田市です。英語ではMosquito coil(モスキートコイル)と呼ばれ、東南アジアに普及し、マラリア、デング熱予防にも貢献しています。

原料は粕粉(除虫菊の地上部分を半年間乾燥させたもの)、タブ粉、でんぷん、ピレスロイド、染料などです。粒径0.2μmの煙粒子に有効成分が多く存在し、煙そのものは拡散のためのキャリアとしての働きがあります。
元来は粉末状にした除虫菊におがくずを混ぜて燃やしていたそうですが、粉末型は使いづらく、また棒状型は20cmで40分が限度で且つ、倒れて火災が発生することから渦巻き型になりました。この「渦巻き型」というユニークなデザインは全長75cmあるため7時間ももち、かさばらないというメリットがあります。これは創業者がとぐろを巻いた蛇をみて、ひらめいたのだそうです。素晴らしいアイディアの裏にはやはり隠されたエピソードがあるものだなと痛感しました。

精油で忌避作用といえばレモンユーカリ(E.citriodora)がお馴染みですが、これには殺虫効果はありません。ユーカリレモンの葉の蚊に対する忌避物質はp-menthane-3.8-diolsで葉の成長の過程でシトロネラールに代わって増量してきます。ヒト嗅覚では無臭ですが、蚊はこの物質を感知して逃げるそうです。決して香り成分が蚊の退治に一役買っている訳ではないという事です。

<参考文献>
Wikipedia/蚊取線香の煙量がアカイエカ成虫のノックダウン効果に及ぼす影響
千保聡他/衛生動物43(2),71-76,1992/日本衛生動物学会
西村弘行/ユーカリの香り成分と生理活性/AROMA RESEARCH65 P24-29

先日の福岡出張の際、馴染みの寿司屋に行きました。大のお気に入りで年に2回は行きます。

写真は剣先イカです。赤酢もほどよい酸っぱさです(米酢に比べると全国的にお店で酸っぱさにかなり差があると思います)し、シャリの固さも絶妙です。

マダカアワビ、ヤイトカツオ、紅瞳(対馬ののどぐろ)、大助(おおすけ:東北・北海道の太平洋側の幻の鮭)、ぎょく(だて巻き)が最高に美味です。なので今回は店名はsecretです。