Sweet Smell 04・05月号

平成31年1月に3年ぶりに「嗅覚冬のセミナー」に参加しました。今年は初めて九州で開催され、産業医大の柴田美雅先生が幹事で北九州八幡のダイワロイヤルホテルで行われました。ホテル眼前には私の思い出の旧スペースワールドの跡地が広がっています。

クリニカルエッセンス:当院における嗅覚診療の工夫と現況

開業医を代表してまず私が発表しました。以下質疑→応答の順で5つ記載します。

1)2ヶ月施行・1ヶ月休薬のサイクルでステロイド点鼻療法を施行しているとのことだが副作用は認めないのか
→臨床上は特に問題は生じていないが、定期的な採血(ACTH、コルチゾル)をもう少し積極的にするべきと感じている。

2)点鼻液の処方ペースは
→週1本なので2ヶ月で8本。

3)患者本人が自分で点鼻するのではなく、本人以外が点鼻するよう指導しているとのことだが具体的には誰がするのか
→患者以外は家族がほとんど。会社の同僚、友人とかいうケースはほとんどない。

4)点鼻姿勢は懸垂頭位法のみで、側臥位法は実施していないのか
→高齢者や頸椎に障害のある患者には側臥位法で施行しているが効果は懸垂頭位の方が良好と思っている。

5)基準嗅力検査での片側ずつ測定の際の片鼻を防ぐ方法は
→患者さん本人に片方の鼻腔を指で押さえてもらって検査している。

他施設からはまず東京のクリニックからタブレットでにおいアンケートやVASを検査していることや、月に1台のペースでT&Tオルファクトメトリーを購入していることなどの、次に京都のクリニックからは患者さん用リハビリノートを手作りで作成し、その日においに関して感じた事を記入してもらっていることや、嗅覚トレーニングキット80を元ににおい球(珪酸カルシウム)を独自に作成して使用していることなどの報告がありました。

一般演題、パネルディスカッション(簡単に羅列します)

自発性嗅覚障害(においが感じられる)の具体的症例として煙、乾燥、酒粕、甘いにおいなど。外傷による嗅覚障害治療にPSL60mg漸減療法を施行。においスティックの「炒めたニンニク」は患者では種類別正答率の結果は悪い(兵庫医大)ものの、逆に正常者では結果が良好である(名古屋女子大)。噴射式嗅覚検査と気流との関係について。罹病期間5年で改善困難。嗅裂部への胃酸逆流の症例。喫煙者は眼窩前頭皮質の容積が小さく、また嗅球はヒトによって大きさが異なる。ハンチントン舞踏病では嗅覚が低下する。将来は“嗅覚相談医”実現化を切望したい、など。

ラウンドテーブルディスカッション

将来の保険適用化を視野に入れた嗅覚刺激療法を実現するため、日本人に馴染みがあり判りやすいにおいを選別する作業を参加者全員で行いました。

合成の単一香料という前提に基づき第一薬品の嗅覚トレーニングキット80の全80種類から事前に選定された13種類全てに3段階の濃度を設けて、計39種類のキットが準備されています。この39種類から各人それぞれ4〜6種類を選択するという手段です。
具体的には杏仁、パイナップル、八つ橋、湿布、墨汁、病棟などがあり、濃度が異なると芳香も異なるため選ぶのに一苦労でした。最終的に採用されたにおい物質の結果が楽しみです。