先月号でも記載しましたが、父が亡くなりました。父の部屋に入ると今だに父のにおいがします。においの源はさすがに加齢臭と思われます。
加齢臭とは汗腺の近くにある皮脂腺からでるパルミトオレイン酸(マカデミアンナッツ油やアボガドに多く含まれる脂肪酸)が酸化してできたノネナール(過酸化脂質)に整髪料、たばこ、酒のにおいも含んだ“総称”です。脂質は酸化されると様々な低分子化合物になり、2-アルケナール、4-ヒドロキシアルケナール、ケトアルデヒドの中でもアルケナールに属する2-ノネナールは青臭い、油臭い臭いとして認識されている揮発性アルデヒドです。また鮮度の低下したビールの劣化臭、カードボール(段ボール)臭としても知られています。
私の代表的な加齢臭は長年使った枕カバーの臭いだと思っていますが、私のはノネナールか、最近30〜40代の加齢臭として話題のジアセチル臭、どちらなのでしょうか。
河村康司実行委員長のもと今年も九州地方会が福岡にて開催されました。私も「認知症と嗅覚」の演題で当日午後より講演したので下記に概要を記します。
嗅覚は刺激が化学物質であり定量的・恒常的な刺激が作りにくいため、研究成果が得られにくいこともあり、五感の中でも軽視されがちです。しかし風味(嗅覚+味覚)におけるQOLの重要性より世間的に着目され、嗅覚の必然性は高いと感じています。最近では、アルツハイマー病、脳血管性障害などを起因とした認知症の初発症状が嗅覚障害であることがトピックです。そこで精神病院認知症病棟患者28名を対象として、嗅覚障害の重症度判定としての基準嗅力検査と、認知症の重症度判定としてのHDS-R(長谷川式)との相関度を検討した結果、γ-0.628と相関を認める結果を得ました。また認知症に対しては全国的に補完代替療法の一環として、アロマセラピーが盛んですが、精油のにおいをただ漫然と嗅がせるだけではなく、“これは何のにおいか”“どのように感じるか”など、官能表現として答えさせる方法を用いた嗅覚刺激療法を今回発案し、施行したので併せて報告しました。統計学的な有意差はみられませんでしたが、反応は上々で改善の余地が充分にあると感じました。最後に上記療法の原案となった「スティック型嗅覚検査」を参加者全員に官能表現の“早嗅ぎ”で実施しました。6番目に答えた方が「墨汁」と正答されました。
午前は株式会社T-LAB、統合医療研究所 神保太樹先生の「アロマは認知症のキーワード」と医療法人社団くどうちあき脳神経外科クリニック理事長・院長 工藤千秋先生の「認知症に及ぼすアロマセラピーの効果」の座長をさせてもらいました。工藤先生は鹿児島市立病院にご勤務されたことがありご縁を感じました。会全体としてPC不具合、設置機材にて移動しにくいなどの反省が残ったものの、参加者は90名程で新たなネットワークの広がりが実感できました。準備のため朝の8時30分にアクロス福岡に入りましたが、中洲は夜のネオンだけでなく朝日も意外と綺麗でした。