Sweet Smell 12・01月号

10月にシェラトン都ホテルでのAllergic Rhinitis Outlook 2018に参加してきました。当日の演題の概要(補足あり)を羅列します。

鼻炎と神経メカニズム

東京大学耳鼻咽喉科准教授 近藤健二先生

温かい食べ物や刺激物を食べた時の鼻汁を味覚性鼻炎と言う。これはTRPという温度感受性受容体が関与しており、チリペッパー、タバスコなどのカプサイシンはTRPV1、わさびに代表されるアリルイソチオシアネート、胡椒などのピペリンはTRPA1に属する。

匂いを感じる脳のメカニズム

理化学研究所 脳科学総合研究センター シナプス分子機構研究チーム
シニアチームリーダー 吉原吉浩先生

におい地図には1糸球体=1嗅覚受容体ルールがある。におい化合物として主なものにカルボン酸、フェノール、ケトン、アルコール、テルペン、ベンゼンなどがあり、具体的にはエタノール、β-PEA(薔薇)、酢酸イソアミル(バナナ)などがある。副嗅覚系(鋤鼻系)の中心的役割を担うフェロモンには餌を探す、交尾相手を見つける、危険を回避するなどの働きがある。味質5種の受容体において甘味受容体とうまみ受容体は種類が1つずつ、塩味受容体と酸味受容体には2つずつ種類があるのに対して、苦味受容体は26も種類がある。

「現代日本酒の魅力について」〜日本酒は今「香り」を楽しむ時代へ〜

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会研究室室長 長田卓先生

利き酒師とは。お酒は米、水、微生物、気候風土、人、伝統文化の賜物である。上立香(うわだちか)と含み香・口中香(こうちゅうか)との違い。香りの表現として酵母→フルーティー、乳酸菌→ミルキー、米麹→ふくよか・豊か、熟成→重厚・凝縮感、大吟醸ほどフルーティーなど。うま味成分にはアミノ酸系としてグルタミン酸・アスパラギン酸(野菜のアスパラガスが由来)、核酸系としてイノシン酸・グアニル酸、有機酸系としてコハク酸(貝、清酒のうま味成分)がある。和酒業界は現在“おもてなし”に力を置いている。

最近は嗅覚・香りに関する専門的な演題、講演会が増えて嬉しい限りです。ちなみにワインにはココアの35分の1しかポリフェノールが含まれていない、ティラノザウルスは嗅球が大脳よりも大きいなどのコメントも印象に残りました。

11月には神戸での日本耳鼻咽喉科学会専門医講習会で嚥下障害、小児の音声・言語障害、高齢者頭頸部がん、医療安全におけるクオリティーマネージメントなどを拝聴しました。専門医制度の変革で単位取得のハードルが高くなっていたのですが、今年になって少し緩和されてきた感があります。

さて神戸と言えば神戸牛を堪能したかったのですが、明石焼きを20年ぶりに老舗「菊兆」で食べました。蛸の入った卵焼きをだし汁で頂きます。昆布だし、かつおだしに三つ葉も加わると一層香りが引き立ちます。普通のたこ焼きのようにソースも提供されたのは初めてでした。ちなみにソースをつけた通常のたこ焼きをだし汁につけて食べるのは神戸たこ焼きと言うそうです。