別欄の「匂いと香りのセミナー」にも記載しましたが、「紅茶と香り」をテーマに薩摩英国館で第60回記念セミナーを開催してから、毎日夕食後に紅茶を飲むのが日課となりました。頂いた"夢ふうき"はアイスティーにしても色調、風味共に濃厚です。
お茶の樹は「カメリア・シネンシス」というツバキ科の永年性常緑樹で、大きく分けて紅茶に適したアッサム種と、緑茶向きの中国種の2種類があります。発祥国の中国では解毒するための植物、すなわち体を健康にする霊薬と考えられてきたそうです。7年前の本セミナー「お茶と香り」まで私も知らなかったのですが、紅茶、ウーロン茶、緑茶は同一の葉から作られ、お茶の種類の違いというのは茶葉の発酵の度合いで決まります。お茶の葉には酸化酵素が含まれており、この酵素を利用して葉を完全に発酵させたもの(完全発酵茶)が紅茶、途中まで発酵させたもの(半発酵茶)がウーロン茶、全く発酵させていないもの(不完全発酵茶)が緑茶という事になります。
紅茶の成分と言えばやはり抗アレルギー作用で話題のカテキンでしょう。カテキンはアントシアニンと同様、フラボノイド(フェノール酸、クルクミン、クマリンなどと共に、抗酸化作用で知られるポリフェノールの1種)に属し、血圧上昇抑制、コレステロール調節、血糖調節なども有します。また紅茶の作成過程での発酵時に酸化されて茶の渋み成分として知られているタンニンへと変化します。
タンニンの語源は「革を鞣す」いう意味のtanに由来しており、本来は鞣革性を持つ物質を指す意味でした。しかし実際は植物成分が複雑に酸化して結合した物質の総称で、タンニンという物質がある訳ではないので名称としては最近はあまり使用されないそうです。ちなみに紅茶の他の有効成分としてはカフェイン、うま味成分であるテアニン(タンパク質)、虫歯効果があるフッ素などがあります。
この夏はゴルフ場にリーフ茶でなく、リーフ紅茶をマイ水筒で持参しようと思います。
(参考文献:知識ゼロからの紅茶入門/日本茶葉研究会編著/幻冬舎)
今年も日本耳鼻咽喉科学会に参加してきました。新しい専門医制度のため、いくつかの演題のみに聴講者が殺到して長蛇の列が発生する事態が起こりました。
演題としては日本医科大学耳鼻咽喉科の鈴木宏隆先生御発表の「ソムリエ・料理人を対象としたオープンエッセンスによる嗅覚機能検査」が印象に残りました。これはレストランに勤務するソムリエ、料理人40名(男性37名 女性3名)に対して検査したところ、年齢では衰えない結果を認め、仕事そのものが嗅覚トレーニングになっているのでは、という内容です。"仕事量"を「仕事処理したお皿の枚数×年数」と解釈された事や、墨汁の香りはワインの官能表現にもあるので少し高得点に結びついたのではとのご意見が参考になりました。
嗅覚飲み会は名古屋らしく「世界の山ちゃん」でした。黒胡椒(香り成分:ピペリン)がかなり強いのには驚きました。味噌カツなどもそうですが、全体的に味が濃いのは、素材をカバーするためかなと感じました。「あつた蓬莱軒」のひつまぶしも食することができましたが、福岡県柳川のせいろ蒸し(若松屋、本吉屋)に軍配を挙げたいです。