先日、グラスの形状で同じワインでも味わいが変わるという趣旨のワイン会に参加しました。そこで晩酌の際、その会で頂いたワイングラスで焼酎を飲んでみたところ新たな発見があり今回のコラムの題材とした次第です。
以下は薩摩切子(主に記念日などに使用。日常は沈寿官氏作のグラス)と今回のリーデル社のグラスとを比べた所感です。
- 島津薩摩切子 二色被せガラス タンブラー瑠璃緑
- (写真左) 高さ9.0cm、胴径8.3cm、容量270CC。
私はいつもグラスに対して氷1/3、焼酎1/3の量のロックです。
@香りを嗅いだ時の芳香、A口に含んだ直後の香味、B一口飲みこんだ後に少し遅れて漂う余薫(よくん)と3段階の香りを感じます。焼酎は透明であるが故、注ぐとグラスの瑠璃緑色が更に映えて視覚にアピールし、左右に揺すった時のカランカランという音色が聴覚を刺激し、もはやグラスというより五感で楽しむ"器"と言えます。
- RIEDEL VERITAS
- (写真右) チューリップ型。容量は約3倍の750cc。
氷を入れた後、焼酎をワイン同様、最も胴径の大きい部分、すなわちグラスの大よそ1/3の目分量まで注ぎます。
飲もうと少し後屈しグラスを傾けたと同時(唇はまだ閉じてます。すなわち上記@とAの間)に上述3段階とは異なる芋の芳醇な香りが鮮烈に漂ってきます。容量が大きく球状なので香りの波が次々に押し寄せてくるようです。集音ならぬ集"香"効果でしょう。特筆すべきは氷を溶かす目的にてくるくると回すと、手を離してもいつまでも氷がカラカラと音をたててしばらく廻っている様(さま)が綺麗でクリスタルのメリーゴーランドのようです。赤ワインを回す仕草とは全く異なる風景です。氷が早く溶けるので濃さを調整しやすいのが利点ですが焼酎の量が多めになりがちで、たくさん飲み過ぎてしまうことが欠点でしょうか。
創業250年を誇るワイングラスの名門リーデル社の公式サイトによるとワークショップ(形状を求めるためテイスティングを繰り返すこと)は「圧倒的に1つの形状」「飲み物の特徴が2種類以上に分かれる場合、グラス形状も2種類以上」「飲み物自体が時代と共に変化し、その変化に合わせてグラス形状を新たに選択」の3つに大別されるそうです。今回はその3番目でしょうか。グラスの形状、氷の量・溶かし方の他、焼酎の種類や量、時間経過などで香りのパターンは無限大だと思います。
NARD主催ケモタイプアロマテラピー九州勉強会(福岡市ももちパレス)に講師として招かれました。
参加者は北九州、福岡、熊本からご参加頂きました。2時間の長丁場でもあるので、終盤は恒例(?)のスティック型嗅覚検査を施行しました。「家庭用のガス」では、クリーニングの袋、歯の治療、酸っぱい、玄関にこぼした灯油、主人の洋服、友達のハーモニカ・笛、押入れの着物などユニークな意見揃いでした。
やはり学校保健委員会(対象:父兄、先生)や学会(対象:医師)よりもこういうアロマセミナーや勉強会(対象:アロマセラピスト)の方がバラエティに富んだ感覚に満ちていると思います。日頃の匂いに対する語彙力、そして香りに対する情熱がベースになっているのでは思います。