Sweet Smell 2・3月号

第13回アロマ・サイエンス・フォーラム2012 (アルカディア市ヶ谷 H24 10月)

これはフレグランスジャーナル社が主催するフォーラムで、以前より毎年行きたい思いがあったのですが、平日で困難でした。

今回はアロマセラピー学会の谷川先生、神保先生が発表されること、また同学会熊本総会の打ち合わせもこの場所で開かれたことより、行く機会に恵まれました。

さすがに嗅覚や香りに造詣の深い方々が集まり、熱い討論を交わしていました(以下敬称略)。

セッション1 香りはヒトの生命をどこまで救うことができるか

アロマによる高齢者医療への挑戦―誤嚥・転倒予防
東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野 海老原 覚
黒胡椒(ブラックペッパー-:BP)群、ラベンダー群、におい無し群の3群にわけ、ムエットを用いて、毎食前1分間の嗅覚刺激を1ヶ月行い、嚥下反射、咳反射(クエン酸法)、末梢血中のサブスタンスP(SP)を測定した。
その結果、BP群のみ嚥下反射の潜時短縮、自発的嚥下運動回数の増加、末梢血中SPの上昇が各々有意に認められ、また脳血流シンチグラフィーにて上位嚥下中枢である島回の血流の増加を認めた。よって、BPは嚥下障害の治療、誤嚥性肺炎の予防になりうる可能性が示唆された。
緩和ケア、耳鼻咽喉科において嚥下障害は今最もトピックスな話題です。この反射運動が制御する大脳基底核の活動にはドーパミンが、延髄でのシグナル伝達には1次知覚神経の神経伝達物質であるSPが各々関わっています。すなわちドーパミンやSPの増加は嚥下反射や気道防御反射である咳反射を増幅させます。
赤唐辛子の主成分であるカプサイシンは三叉神経よりTRP(transient receptor potential)V1受容体に作用してSP上昇をきたし嚥下障害の改善をきたすことは知られています。BPの主成分のピペリンもTRPVI活性化能を有しているため、今回のこの結果はカプサイシンと同様の機序に基づくものと思われますが、加えてBPの主な香り成分であるβ-カリオフィレンが知覚でなく嗅覚作用としてSP上昇などに関与しているのか否か興味あるところです。
この度、日本アロマセラピー学会熊本総会での特別講演を会長を通じて依頼致しました。吉報を待ちたいところです。

セッション2 21世紀:企業の香り戦略を探る

上記6つの演題に代表されるように、現在空前の"香り(アロマ)商品ブーム"です。
しかし化学物質過敏症支援センターによると「香料自粛の御願い」のポスターが200ヶ所以上の公共施設で張り出されるなど、香料自粛運動が岐阜市などの地方自治体を中心に繰り広げられています。
その理由としては香料が化学合成品で作られたものだという先入観のためか、化学物質過敏症が誘発される恐れがあるからだそうです。シックハウス症候群や農薬などの話ならわかりますが、アロマセラピーを遂行する立場より、100%天然香料を良しとする考えの私でも、少し行きすぎなのではと感じています。