Sweet Smell 2・3月号

▼いとう耳鼻咽喉科

今回は昨年秋に訪問したアロマ関連の医療施設2ヶ所を紹介します。

1ヶ所目はいちき串木野市のいとう耳鼻咽喉科です。

13年前に新規開業され、3年前より旧診療所を障害者自立支援法に基づく就労支援事業所"ワークスペースi(アイ)"として開設されました。そして18歳以上の知的障害者、精神障害者、身体障害者の方々を対象に、自活するための技術習得として、プリザーブトフラワー、トールペイント(木片、ブリキに絵を描く)、パソコン、縫製などが行われています。施設内は従来の作業所のイメージとは程遠く、明るい雰囲気です。

また車で10分ほどの現診療所2Fの就労支援カフェ"カフェi(アイ)テラス"では現在数名が就労訓練を受けており、昨年末初めて利用者の就職が決定したと、院内全体が喜びに満ち溢れています。

今回、その学習活動の一環として、アロマセラピーを取り入れることになり、川路美穂先生を紹介した関係で見学に行きましたが、施設・活動の素晴らしさに後日スタッフ全員を連れて再訪したほどでした。耳鼻咽喉科単科ではこのような施設は全国唯一とのこと。末永く続けてほしいと願います。

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2ヶ所目は水俣市立総合医療センターです。

診療技術部長で消化器・乳腺外科専門医の谷川富夫先生は、日本アロマセラピー学会の理事で以下の如くの研究を行っています。

(1) 「各精油における電気生理学的解析 ―聴覚事象関連電位P300の検討―」
日本アロマセラピー学会誌:35〜40P、2005年
(2) 「精油の痛覚に及ぼす作用の電気生理学的解析 ―Aδ神経線維刺激による痛み関連電位の測定―」
日本アロマセラピー学会誌:30〜35P、2010年
(3) 「精油の痛みに対する薬理効果 ―痛み刺激によって生じる脳電位に関する臨床と基礎研究―」
AROMA RESEARCH 44:12〜19P、2010年

▼谷川富夫先生

電気生理室の中で、所狭しと置かれている脳電位計、神経刺激装置などを横に、先生から研究の苦労話、定期的に勉強会を施していること、乳がんの患者さんを対象にメリッサ、ネロリ、ローズマリーなどのブレンドオイルによるアロママッサージで癒し効果、鎮痛作用を緩和ケアの一環として行っていることなどを伺いました。この結果の論文が(3)です。すなわち(1)〜(3)の論文は精油における電気生理学的検査の有用性→痛みに対する精油の治療効果判定→臨床の場での実践結果と一つの線となっているのだなと感じました。

リハビリ室の後にはMEG(magneto-encephalography:脳磁図)も見学させて頂きました。精油を応用した研究が期待されるところです。

あまり訪れることの無い水俣ですが、新幹線でわずか30分なのは意外でした。