今回は春らしく“潮と香り”がテーマです。
この春、環境省の“かおり風景100選”である指宿の知林ヶ島に家族4人で行きました。この島は満潮時は海岸より独立していますが、干潮時になると潮が引くことにより砂州が出現して、その時間帯(1日数時間、時期にもよる)のみ歩いて行く事ができる鹿児島有数の観光スポットです。800mにも及ぶ“砂の小道”は幻想的です。
山口大工学部の樋口隆哉先生の報告(“海辺環境における香りの発生実態と感知特性” AROMA RESEARCH No.11 2002)によると、海浜のニオイに関与する成分としては海岸大気中の香り、すなわち海水、海藻からの揮発物質(テルペン類、硫黄化合物、窒素化合物、有機酸、アルコール、アルデヒド)が主で、においの強度、質は(1)季節、(2)照度、(3)潮汐などの環境条件の変化に影響されるとのことです。
(1)季節 : 海藻が生長する時期のために春、夏、梅雨の順番に香りが強い
(2)照度 : 夜間よりも昼間が強く、日光による生物活動の活発さ、光分解などが、におい物質の種類及び、生成・分解速度に影響する
(3)潮汐 : においが強く感じる時間帯は引き潮の時で、潮位が下がることで、海藻類が出現するために、におい物質の大気中への揮散量が増大するため
残念なことに今回は爽快な潮の香りとまでは感じませんでした。上記から察すると、季節は適しているものの、当日の天候・気象条件に恵まれなかった(曇りで風が強いため肌寒く、また中国からの大量の黄砂あり)ということになるのでは思いました。
鹿児島県のもう一つの“かおり風景100選”である屋久島(照葉樹林、鯖節の香り)には意外と訪れる機会はありません。それこそ“匂いと香りのセミナー”の院外ツアーとして行くしかないでしょう。