Sweet Smell 10・11月号

皆さんはニオイの嗅ぎ方を意識したことはありますか。

においを嗅ぐ、または感じる方法にはSniff method(スニッフメソッド)と、Smell method(スメルメソッド)とがあります。最大の違いはにおいの到達経路であり、前者はortho-nasal(オルソネーザル:前鼻腔からの吸気による)であり、後者はretro-nasal(レトロネーザル:後鼻腔からの呼気による)ということです。

Sniff methodには2通りあります。

まず一つ目は、大きく息を鼻で吸い込む方法で、これは通常の呼吸下では、嗅裂部への吸気量が鼻腔内の全流量の5%であるのが意識的に吸い込む(2〜3秒に1吸気がベスト)と、全流量の25%までUPするためと言われています。いいニオイをじっくりと嗅ぎたい時は自然とこの嗅ぎ方になっていると思います。

もうひとつは、くんくん鼻を鳴らすようなニオイの嗅ぎ方で、短時間刺激パルス法と言われ、嗅覚疲労(順応)を避けるためと言われています。1秒以下の短時間でのパルスでも嗅細胞は電気生理学的に十分な応答が可能と言われています。くさいニオイを嗅ぐとき、早くこのニオイが何だか知り得たい時はこの嗅ぎ方でしょう。

Smell methodにはスニッフメソッドよりもニオイを感知する上で数々の利点があります。

  1. 呼気は温度が温かいので、ニオイ分子が嗅粘膜に受容されやすい。
  2. 吸気よりも呼気の方が嗅粘膜におけるニオイの滞留時間が長く、その分長い時間、嗅粘膜に暴露されやすい。
  3. 呼気では外気のニオイが混ざりにくく、純粋なにおいで感知されやすい。
  4. 鼻腔粘膜の知覚神経である三叉神経が関与されないので、純粋に嗅神経のみが反映されるので嗅覚の研究においてニオイの伝達経路などのデータがとりやすい。

最近は口中香・もどり香とも言われ、ワインのテイスティングや焼酎・お茶の味わいでも話題になっていますね。

PS:写真は鹿児島の名旅館"雅叙苑"です。別邸の"天空の森"もかなりのお勧めです。


参考文献

柿木隆介 | AROMA RESEARCH No.38号より "機能的MRIを用いた嗅覚関連脳反応"

古川 仭 | アロマサイエンスシリーズ9 香りの研究エッセイ

倉橋 隆 | 嗅覚生理学

すべてフレグランスジャーナル社刊