第72回 平成30年4月5日(木) 14:00〜16:00
黒酢の風味(参加者18名)
黒酢本舗志田(霧島市福山町)
今回はこれも鹿児島特有の香りと言える黒酢を選びました。福山町に行くのは初めてで、またセミナー史上“酸っぱい香り”も初めてでした。ランチは黒豚酢豚と白身魚の黒酢餡かけを頂きました。通常の酢よりもまろやかでありながらコク味が強く美味しかったです。
▼講話
桷志田(かくいだ)の名前の由来は年貢徴収を逃れるために支配者に隠して耕作する田の意味の隠田(かくしだ・おんでん)から隠し田→角志田→桷志田(かくいだ)となった。
お酢の深部(通気)発酵法に対して、黒酢は静置法であることが両者の製造方法の違いである。プロペラで攪拌して短時間で大量に生産できる安価なお酢に対して、静置法では自然対流、自然循環にて酢酸菌が菌膜を形成する。この酢酸膜で精製されたコクが閉じ込められ、旨みが充分な黒酢ができあがる。発酵に6ケ月、熟成には3年以上かかり、色調は1年物が黄色、2年物が茶褐色、3年物が黒色と変化し、3年物のプレミア黒酢「泉」はD-アミノ酸豊富で深味がある。また熟成最長の期間としてバルサミコ酢同様に100年物がある。
最近の技術革新として香りのクセの一因となっているジアセチルやアセトイン(酵母が作り出すバターの様なにおい)などを酢酸発酵後に低温貯蔵するなどして軽減させることに成功した。医学的効用としてはカルシウム吸収や減塩、降圧作用、アミノ酸や蛋白質からの抗酸化作用などの可能性がある。
▼仕込み体験
麹菌(製造用に培養されたカビの一種)はでんぷんを糖に分解し、乳酸菌は乳酸を産生する。また酵母菌は糖分を分解してアルコール発酵させ、酢酸菌はエタノールを酸化発酵させて酢酸を産生する。
酢の生産量は都道府県別に鹿児島、岡山、徳島の順であり、徳島が多いのはわかめの酢の物をよく食べるからである。
ふり麹とは水、玄米、米麹を入れて「水の蓋」をすることで雑菌を防ぐ役割になる。空気が通るように和紙を用いると2〜3日で膨張してき始め、黒酢になってから3年で酸度が上昇する。
春の仕込みはなんと一遍に2000本で、随時こまめな攪拌が必要である。臨床的効果として酢酸からのアデノシンで降圧作用が言われており、それには1日30mlを15倍に薄めて飲むとよい。
▼亀壺畑
▼売店
2万本もの亀壺畑は圧巻な眺めでした。亀壺は常に屋外に常置されて吹き曝しですが台風とかよりもモグラが掘ることで壺が傾くことの方がよほど危険だそうです。仕込み体験もできて時期を調整した甲斐がありました。
最後に黒酢の試飲をしましたが、1年物は酸味が強く、3年物はコクが出てき始め、5年物は飲んだ後にしばらく余韻を感じました。今はサラダに黒酢をかけて食べる毎日です。
福山町は噴火の続く桜島、硫黄山、新燃岳に囲まれており、黒酢はこの地熱と温暖な気候が生み出す“南国の恵み”だと思います。