第61・62回 平成28年6月30日(木)14:00〜16:15
7月2日(土)16:00〜18:00
香道への誘い(参加者22名)



10年を迎えた当セミナーで日本古来の伝統芸能をテーマとしたのは今回が初めてです。

▼堀之内夕子先生

堀之内夕子先生

講師 堀之内夕子先生

資生堂プロフェッショナル株式会社本社CARITAを経て鹿児島アンチエイジングの会主宰として美、食、健康の3つの観点より香の世界へ。香に魅せられ、日本でも3名しかいない美創香家香司となられ、「和のこころ、和の香り」を鹿児島より発信中。

昨年はミッドタウンにて「香と運動機能、願望実現」で講演。現在は調香、香薬膳主催(莵道竈門)として独立し活動している。

お話

香久之木之実(かぐのこのみ)→かくのこのみ→嗅ぐ(かぐ)という言葉が生まれた。また黍を焚いてその甘い匂いが漂う様から、「黍」と「甘」の二つの漢字が組み合わさって「香」という漢字が生まれた。

▼香一式 地敷

香一式 地敷

香あそび

日本の伝統的な芸道で一定の作法のもとに香木を焚き、立ち上がる香りを鑑賞する。香木の香りを“聞き”、鑑賞する「聞香(もんこう)」と、香りを聞き分ける遊びである「組香(くみこう)」とがあり、今回のセミナーはその後者を実践しました。

香の聞き方は、出された香炉を左の掌の上に載せ、右の掌で香炉の上を覆うようにして、呼吸を整えつつ静かにその香を聞きます。聞き終わったら一礼しそれを次に人に回します。すなわち一つの香炉で数種類の香木の香りを参加者全員が順番に聞いていく訳です。

▼香あそび

香あそび

セミナー当日が6月30日で「夏越の祓(なごしのはらえ)」にあたるのでこの語を組香のお題としました。まず事前に試香として2つのにおいを順番に嗅ぎ、それぞれ「な」と「こ」という名称で各々のにおいを覚えておきます。その後、本番としての本香(ほんこう)にて3つのにおいをかがせます。そのうちの2つは事前に嗅いだ「な」、「こ」のいずれかです。嗅いでいないものと判断したなら「し」と答えます。すなわち回答例はなしこ、なこし、しなこ、しこな、こなし、こしなの6パターンという事になります。私は、「な」は薄い木の香り、「こ」は「な」よりも少し甘いと感じ自信をもって「し・こ・な」と答えたのですが、全問不正解の意の“祓い(はらい)”と手記録紙に記されてしまいました。

それぞれの香木は主に六国五味(りっこくごみ 別項SweetSmell参照)より選定します。その中から「な」は伽羅、「こ」は羅国、「し」は沈香が使われ、順番の正解は「な・し・こ」で正解者は3名でした。ちなみに3問全て正解は“叶(かなう)”、2問正解は“半夏生(はんげしょう:半分だけ白い植物だから)”、1問正解は“水魚(みずうお:下を潜るから)”と表します。

次の回(第62回セミナー)は7月2日で旧暦文月(ふみづき)は文被月(ふみひろげづき)とも言い、ほおづきを飾ります。そこで古事記にて別の呼び方でもある「輝血(かがち)」を組香のお題としました。私は今度こそと「か・が・ち」と答えたのですが、正解は「ち・か・が」で今回も不正解の「つたう」を頂きました。座席が先生の隣に座る亭主なので、まだ香がよく立っていないためと先生から(慰めの?)言葉を頂きました。ちなみに3問全て正解を“皆”、以下“青ほおづき”、“つぼみ”、“つたう”と記し、「か」は白檀、「が」は羅国、「ち」は伽羅だったそうです。

▼匂い袋 材料

匂い袋 材料

匂い袋づくり

山奈、甘松、排草香、安息香などを少量ずつ選択した香材を、紗袋に綿とともに詰めて、仕上げに青紅葉を加えて完成です。幾十も折り重なった複雑な香りなのですが、それでいて店先で売られている匂い袋より随分と柔らかい和の香りを感じました。

季節のお菓子

最後は夏越の祓で年前半の厄を祓い、後半の無病息災を願い食す意味で、かるかん元祖明石屋の季節の縁起菓子「水無月」「鬼灯(ほおずき)」を白湯とともに頂きました。

通常は病院待合室で開催しているのですが、今回初めての試みで院内奥の自宅を使用しました。襖、畳を張り替え、6畳2間の茶室仕様になんとか仕立てました。

最初から香あそびに入られ、随所に先生のお話を織り交ぜる形で会が進行したので間延びせず、2時間あっという間でした。参加者の感想としてはセミナー内容が良かったという意見の他に、堀之内夕子先生ご自身の優美且つ大和撫子的な雰囲気や佇まいにお褒めの言葉を沢山頂いたことが今回のセミナーを象徴していると感じました。