恒例の第10回嗅覚冬のセミナーは青森で令和7年1月12〜13日に開催されました。
- 日本における嗅覚刺激療法全国研究の進捗状況
- 奥谷文乃(高知大学)
- 外国のデータとの非劣性を目標に研究中。においスティック検査におけるバラ(嗅素)は時間経過とともにレモンに感じやすくなるので開栓後は3か月以内に使い切り、また購入1年以内には使用すべき。
- インターネット大規模疫学調査を用いた嗅覚障害の横断研究
- 鈴木淳(東北大学)
- スペインの簡易嗅覚検査を用いて3か月以上嗅覚障害なし例を対照群とした。在宅勤務に嗅覚障害が多い、嗅覚障害をきたすとプレゼンティズム(就業しているものの病気や体調不良にて仕事に集中できず労働生産性が低下する)に影響あり、などの結果を得た。
- 嗅覚障害患者における嗅裂病変と鼻腔PH
- 関根瑠美(慈恵医大)
- 嗅覚障害がより重症なほどPHがアルカリ性を示す。PHを左右する要因は嗅粘膜腫脹や嗅粘液増量ではない。
- 超高齢者社会における嗅覚の可能性
- 竹内春樹(東京大学生物学教授)
- 匂い刺激は脳内アミロイドAβ(40アミノ酸のペプチドでアルツハイマー病で蓄積する)を減少させるγ波(脳波の一種)を誘起する。芳樟精油暴露マウスはアミロイドAβ量が減少した。リナロール暴露でも濃度依存性にアミロイドAβ量が減少した。においを嗅ぐことによりドーパミンが産生される。オイゲノールはメンソール同様、三叉神経を刺激する。
- 嗅覚に影響を与える因子の検討 岩木プロジェクト健診から
- 三國谷由貴(八戸市民病院)
- 住民500人以上を対象ににおいスティックのカレー、ひのき、墨汁で検査した。
結果と考察:
喫煙との関連なし。たばこによる嗅覚障害は可逆的なのでPack-yearsを重視すべき。玉ねぎ、大豆、スパイスをより摂取するほど嗅覚検査の結果が良好→具体的にはカレー。同様にレバーと焼き肉を摂取している人ほど、また亜鉛80以上の人も嗅覚検査の結果が良好。巧緻性の高い手指活動すれば脳血流増えるので嗅覚改善が期待できる。
他データ等:
弘前、金沢、東京の調査ではにおいスティックの正解率はカレー、ひのき・・ 練乳、家庭用ガスの順であった。高知はみかんの産地なので、みかんの正解率が高いのでは。嗅覚が悪いのは塩分摂取量が多いため。においスティックのマイクロカプセルの成分はテトラキサン系で、北陸ガスはテトラキサン系なので家庭用ガスの正解率が高い。ちなみに全国はメルカプタン系。
- 更年期の嗅覚障害に当帰芍薬散は有効か
- 志賀英明(金沢医大)
- 閉経後の女性に感冒後嗅覚障害が多いのはホルモンとの関係が一因。蒼朮含有のオイデスモール(胃酸分泌を抑制するH2ブロッカー作用があるセスキテルペノイド)が神経細胞の分化誘導に働く。
当帰芍薬散投与28日後にOMP(Olfactory Marker Protein:嗅覚マーカータンパク質。成熟した嗅神経に発現している可溶性酸性タンパク質)が増加する。当帰芍薬散は神経栄養因子(NGF、BDNF、basic-FGF、IGF-1)に作用する。NGFは嗅球に大量に存在し、メチマゾールを投与しただけでも増加する。
疑似処置マウス・卵巣摘出術マウスのモデル群と当帰芍薬散投与群とでは酪酸の忌避行動の有意差は見られなかった。閉経後女性では当帰芍薬散内服しても治療効果が減弱すると予想される。
- Questionnaire of Olfactory Disorder(QOD)日本語版作成の試み
- 赤澤仁司(堺市立総合医療センター)
- ドイツにおける4択問題29問、VAS 5問などから成るQOL質問票で、QOD、NS-QOD、brief-QODの3種類がある。異嗅症、QOL(否定的、肯定的)、社会的側面など心理的側面の調査になるが検査時間は10分と長い。Validation(内部整合性・検証)や他のQOL質問紙との相関が今後の課題。
- 当科における小児嗅覚障害症例の検討
- 春名威範(兵庫医大)
- 基準嗅力検査、においアンケートを施行。小児例は全体の2%を占め42%の改善をみた。原因として先天性、感冒後など。先天性嗅覚障害は治療法はない。成長期における嗅裂部狭窄も原因の一つとして考えられる。
SONYのにおい提示装置を久しぶりにデモ見学しました。
前回(本稿2023年6-7月号参照)よりも進歩した点は
@セルフモードになった
A同じ嗅素で濃度を変化できる
B同じ濃度で嗅素の種類を変化できる
です。
合間の時間にNAIM(Nasal-Airflow Inducing Maneuver)法を山内一宗先生(むつ総合病院)よりご教示頂きました。喉頭摘出患者における嗅覚獲得のリハビリ法で口の中のあくびをかみころす、口腔内で舌をあおぐ感じで鼻腔内を陰圧にすることが目的だそうです。また発祥はオランダで喉頭摘出術2週間後より開始しているそうです。次回はNAIM法におけるリハビリテーション器具についてもお尋ねしたいです。
東京に前泊して新橋鶏繁の焼き鳥(レバー、ささ身)に舌鼓を打ちました。プレミアム三井ガーデンホテルの最寄りの東銀座駅から、初めて京急線で羽田空港へ直行で行きました。
青森市内は2日間とも快晴でしたが市内全域2mほどの積雪で下半分は泥のため茶色(写真左)でした。
宿泊の浅虫温泉南部海扇閣は八甲田牛の朴葉焼の味噌が美味しく、館内行事の津軽三味線は感動しました。2次会(写真右)は今年も0時まで続きました。

長尾中華そばの濃厚煮干しラーメン(ごぐえぎ)は旨味が凝縮してクラムチャウダーほど濃厚でしたが、青森空港の味噌カレー牛乳ラーメンは「?」でした。
おみやげでは生のリンゴを丸ごと使ったアップルパイ、りんごジュースが家族にも評判でした。
来年は函館に内定で楽しみなのですが、過去に行けなかった三重、兵庫(有馬温泉)が今更ながら残念です。弘前大学の皆様有難うございました。