Sweet Smell 04-05月号

ネブライザー

新型コロナ感染症のクラスターが発生しやすい科との報道までされた耳鼻咽喉科ですが、その要因のひとつとしてネブライザーがあります。

ネブライザーとは薬液を微粒子にしてエアロゾル化した薬剤を気道局所に到達させる医療機器です。川崎医科大学耳鼻咽喉科の丘行義先生はこのネブライザー療法(エアロゾル療法)の利点として全身投与に比べ容易に局所薬の有効濃度が得られること、即効性が期待できること、全身に及ぼす影響が少なく安全性が高いこと、苦痛が少ないので幼少児でも施行可能なこと、などを挙げています。

今回のコロナ禍において昨年春に日本環境感染学会においてネブライザー療法がコロナウイルスの飛沫エアロゾルを発生しやすいと当初発表しましたが、その後「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版改訂」にて耳鼻咽喉科で使用する薬剤を用いたネブライザーは該当しないと訂正されました。これをもとに日本耳鼻咽喉科学会は「耳鼻咽喉科の処置・検査における新型コロナウイルス感染対応ガイド─各論―」にてネブライザーそのものが直接エアロゾル感染を発生させる根拠はないがくしゃみ・咳を誘発してウイルスが飛散する可能性はあるためできるだけ施行を控えるべきで、また施行する際も室内換気・患者間の空間を十分に対処するべきとの指針を発表しました。

これを受けて昨年上半期は全国のほとんどの耳鼻咽喉科にてネブライザーの施行中止、または規模縮小を余儀なくされ、「日本臨床耳鼻咽喉科医会会報」における会員アンケートでは令和2年4〜5月のネブライザー完全休止が58%と半数越えの異常な結果となりました。

当院では
@換気目的で窓を開放する
A距離を離して今までの3人掛けを2人掛けにする
B鼻ネブライザーの際はマスクを着用する(蒸気吸入はマスク不要)
C症例を選び、必要な方、希望する方のみ施行する
などの対応をとっています(現在はCはほぼ解除)。

勿論これらのネブライザー療法はアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎が原因としておこる嗅覚障害の改善のために必須です。また前回触れましたがサーモライザー(蒸気吸入)は湿潤状態を保ち、ウイルスを洗い流すためにも新型コロナウイルスに対して必然な治療方法と思います。新型コロナはこのように時間が経てば解決(方針転換)する懸案がある一方、エビデンス構築を必要とするなど時間をかけないと方向性が決まらない懸案もこれから先、山積みのことでしょう。

人間ドック

診療を休診して3年ぶりに人間ドックに行ってきました。頭部MRI、胸部・腹部CT、胃カメラを施行し、今回も特筆すべき異常所見はないとの結果で安堵しました。

胃カメラと言えば最近嗅覚受容体(odorant receptor:OR)が消化管にも存在するとの論文を拝見しました。さすがに嗅覚ではなくて別の機能を携えているとのことですが興味あるところです。

ところで視力・聴覚検査はあるのに嗅覚検査、味覚検査はどうしてないのでしょうか。