Sweet Smell 10-11月号

納豆の臭い

私は小学校の頃から納豆が好きです。当時は家族で食べるのは私1人だけでした。子供心にあの特有の匂いに惹かれたのでしょうか。今は家内も子供も皆大好きです。大豆、小粒、ひきわりなど様々ですが、私は断然大豆派です。水戸納豆やおかめ納豆もいいですが、地元「しかや」の大粒が私は好きです。北大路魯山人は400回もかき混ぜるのが好みだったと言われており、白い糸がよりできる程γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)が豊富です。しかしネバネバしすぎてビールとの相性が良くないので、私は5〜6回と軽めです。

さて納豆は高蛋白質で知られる日本の伝統的食文化の一つですが、外国ではテンペやキネマというものがあります。大徳寺納豆は酵母菌、糸引き納豆は納豆菌(Bacillus subtilis natto)による発酵が生成に関与しています。納豆菌は大豆のたんぱく質を分解する際にアンモニア臭を伴うので臭いのですが、そもそも納豆菌自体は自然の藁に付着しており、藁にはアンモニア臭を吸収する働きがあります。また辛子のアリルカラシ油という成分はアンモニアと化学反応を起こして別の物質に変えるので臭い軽減に役立ちます。この納豆の臭いは食品業界では不精香とよび、香気成分はジアセチル、アセトイン、低級脂肪酸など100種類ある一方、効能成分には酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸などがあります。医学的効用としてはビタミンKを多く含む他、ウロキナーゼやプラスミンに似た非常に強いフィブリン分解活性を示す血栓溶解作用を持つナットウキナーゼという酵素があります。また納豆菌は大腸菌の抑制効果も報告されています。

私は食べ方にこだわりがあって、器には移さずに発泡スチロール製パックに納豆が入ったまま、そこに付属の辛子、タレ、ネギ、そして生卵を入れてかき混ぜます。パックから納豆&生卵が溢れそうになるので要注意です。そして少量ずつ白ご飯を入れて食べるのです。パックの縁に口をつけて食べようとすると、まず間違いなくこぼれ落ちるので、端っこから流し込むようにすすり食べるのがコツです。さすがにホテルの朝食ではしません。

<参考文献>
佐藤泰彦/「匂いと機能性食材 納豆あれこれ」AROMA RESEARCH65/フレグランスジャーナル社
須見洋行/「納豆の歴史と機能成分」日本味と匂学会誌2007年8月/日本味と匂学会
雁屋哲/「愛の納豆」美味しんぼ8/小学館

広島の匂い

9月の連休に広島に家族旅行しました。全国香り100選の厳島神社の潮の香りを嗅ぎました。他の“広島の匂い”は穴子めし、揚げもみじまんじゅう、焼きガキ、呉焼き(細めのうどんを入れて半折りにした広島風お好み焼き)などでしょうか。

他には「陽気」中華そばの味噌味、原爆ドームの内壁と外壁のコントラスト、世界遺産航路の利便性、宮島・弥山ロープウエーの急勾配、呉・「鉄のくじら館」に見る海上自衛隊の生活の困難さ、赤一色の広島市内(当時広島カープM3)などが印象に残りました。